第68回_風俗雑誌とマンガ家_その12

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僕は10年以上に渡ってアダルトやデリヘル、ソープランドなどの世界で仕事をしている。もちろん、アダルトが好きで仕事を続けている人もいるが、その多くは“流れ着いた先がアダルトだった”というケースだろう。タックル松田さんもそのひとりであり、このコラムに登場した人物の誰もがそういったケースだ。もちろん、僕もそのひとりと言える。

 

近年の日本は空前のアイドルブームとなっているが、元アイドルがAV女優デビューすることは珍しく無い。単純に、「AV女優という職業が市民権を得ており、デビューすることへの抵抗が少なくなった」と言えるが、そのどこかに「これをきっかけに、もう一度表舞台に出てやろう」と考えている部分もあるだろう。現在はAV女優がアイドル的な活動をすることも多く、アイドルブームの追い風を受けて一発逆転出来る可能性もある。そのため、そういったAV女優からは強いバイタリティを感じるのだ。

 

タックル松田さんも風俗マンガを描きながらも、自分の本当に描きたい釣りマンガのためにチャンスを伺っている。僕だって音楽ライターを目指して出版業界へ入ったが、多くの仕事は風俗雑誌だ。しかし、何としてでも自分の求めるフィールドに近づいてやろうと考えて仕事をしており、実際に音楽ライターとしての仕事も受けることが出来た。

 

アダルト業界は広い受け皿だ。丸いもの、四角いもの、すべての形を受け入れることが出来る。そして、アダルト業界の住民はアダルトという皮を被っておきながら、その内側では虎視眈々と次のチャンスを伺っているのだ。しかも、その熱量は尋常では無い。

 

タックル松田さんのブラックバスのイラストにそれを感じたが、僕は過去にも同様の熱量を感じたことがある。それはアダルト雑誌の仕事を始める際に、参考資料として自宅に眠る若き日にお世話になったアダルト雑誌を読み返したときのこと。

 

当時はグラビアページだけにしか興味が無かったが、雑誌全体に目を通すことで新たな発見があった。それは白黒ページの企画だ。とあるアダルト雑誌はエロ本でありながら、白黒ページでCDプレイヤーやスピーカーなどのオーディオの紹介が特集されており、それは非常に作り込まれたものだった。そして、別のアダルト雑誌の白黒ページではホラー映画が特集されていた。

 

この人たちは本当はオーディオ雑誌やホラー映画雑誌が作りたいが、そういった編集部に入ることが出来なかったのだろう。しかし、アダルト雑誌という世界でありながら「次のチャンスに繋げてやろう」、「0.01%の人にでも楽しんでもらえれば」という熱を白黒ページに注いでいるのだ。アダルト雑誌読者の白黒ページまでチェックする層はどれだけいるだろうか。それでも彼らは熱を注いでいるのだ。

 

そういった方向への熱量を持った人間たちがアダルト業界を支えている。これが少しでも分かって頂けたらこのコラムを書いた意味がある。ありがとうございました。

 

終わり