第62回_風俗雑誌とマンガ家_その6

更新

「はい。松田でございます」

 

前回と同じ年配の女性の声だ。恐らくタックル松田さんの奥さんだろう。

 

「タックル松田さんに仕事の依頼でお電話いたしました」

 

「少々お待ちくださいね」

 

今回の依頼は吉原ソープランドの体験マンガだ。前回は埼玉デリヘルの体験マンガだったが、基本的な部分は同じようなもの。しかし、ソープランドとは非常に表現が難しいジャンル。このコラムをチェックするほどの風俗ファンの諸兄であればご存知だろうが、ソープランドのサービス内容は非常に特殊で、その立ち位置は法律的にグレーゾーンかつデリケートなもの。

 

世の中にはいくつもの風俗雑誌や風俗ポータルサイト、風俗求人サイトなどが存在しており、それらには漏れなくソープランドの情報が掲載されているが、具体的なプレイ内容について触れられているものは無いだろう。風俗を専門的に扱うメディアであればあるほどプレイ内容の紹介は難しく、何よりソープランド側が嫌がってしまうのだ。

 

これは体験マンガにおいても同様のこと。そのため、具体的なプレイ内容よりも「こんなにゴージャスな店構え」、「キレイな女性とご対面」、「女性に身体を洗ってもらって良い気持ち」、などの表現を重視しなければならない。さらに、デリヘルなどの風俗マンガでは当たり前の女性の乳首やヘアの描写もNGだ。

 

これは意外に思われるかも知れないが、コンビニにも並ぶようなメジャーな風俗雑誌のソープランド体験マンガでは、性的な表現が漏れなくスルーされている。仮に性的な表現があったとしたら、それは風俗雑誌ではなく実話誌や裏モノ雑誌に掲載されたものだろう。

 

それでは、風俗雑誌のソープランド体験マンガで性的な表現をしたらどうなるのか。最悪の場合、雑誌が無くなってしまうだろう。風俗雑誌にはソープランドの広告も掲載しているため、ソープランドはスポンサーでもあるのだ。そのスポンサーにとって不本意な表現方法をしてしまうと、広告を出してもらえずに収入が途絶えてしまう。そのため、このような形の体験マンガになってしまうのだ。

 

性的な表現が出来ないことから、今回の体験マンガに関しては、“主人公は普段川崎のソープランドで遊んでいるが、割引情報を手に入れたことから吉原を初体験してハマってしまう”というストーリーを付け加えている。

 

僕はこのソープランドの暗黙のルールをタックル松田さんに伝えた。何より避けなければならないのは、“風俗マンガでありながら性的な描写NG”ということだろう。そして、過去に掲載された、別のマンガ家によるソープランドの体験マンガのコピーも資料として渡した。これだけ入念にしておけば安心だろう。

 

続く