第58回_風俗雑誌とマンガ家_その2

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このコラムをチェックしている諸兄であればご存知だろうが、風俗雑誌には必ず風俗体験マンガが掲載されている。テキストと写真だけの誌面はどうしても見栄えが悪くなるため、マンガを挟んで華やかさを出しているのだ。しかし、風俗体験マンガは性的な描写が欠かせないことから、どのマンガ家も描ける訳では無い。エロに抵抗の無いマンガ家は限られているのだ。

 

いわゆる萌え系エロマンガが巷に溢れていることから、「そういったマンガ家に依頼したら良いのでは?」と思うかもしれないが、簡単に依頼は出来ない。何より風俗店の描写が出来なければならないのだ。ソープランドのプレイルームやラブホテルのレイアウトなど、特殊な環境を描けるマンガ家は少ない。また、風俗のジャンル毎のプレイスタイルを描き分けるスキルも必要だ。

 

そして、何よりネックになるのは原稿料だろう。風俗雑誌はとにかく予算が無い。さらに、無理なスケジュールで依頼されることも多いことから、予算とスケジュールをクリア出来るマンガ家は本当に限られているのだ。風俗マンガは数あるマンガのジャンルの中でも、非常に厳しい仕事と言えるだろう。僕がかつて在籍していた編集部では、こういった無理な仕事を引き受けてくれるマンガ家を常にストックしていた。

 

どのマンガ家に依頼するかは、ページを担当する編集スタッフの裁量に任されており、その時は僕が体験マンガのページを担当することになった。関東の風俗特集で、埼玉のデリヘルの体験マンガを載せなければならない。

 

風俗体験マンガとはマンガ家自身がプレイをする訳では無く、写真資料や編集スタッフの構成したストーリーをマンガ家に渡し、それらをベースにしてマンガ家が描き上げるのだ。今回は写真資料が豊富に揃っているため、それほど難しい案件では無いだろう。そこで、これまでに僕が依頼したことの無いマンガ家にお願いすることにした。

 

そのマンガ家のペンネームは、タックル松田(仮名)さん。半年ほど前から僕の風俗雑誌が仕事を依頼するようになったマンガ家だ。タックル松田さんと仕事をしたことのある編集スタッフに質問をしてみる。

 

「埼玉デリヘルのマンガなんだけどさ、タックル松田さんにお願いしようと思うんだけど」

 

「タックル松田さん?いいんじゃないの。画力はなかなかあるし仕事も早いよ」

 

「そっか。それなら今回はタックル松田さんにお願いしてみるわ」

 

それにしても“タックル松田”という酷いペンネーム。一体何者なのだろうか?そんなことを考えながら、僕はタックル松田さんに電話をかけた。

 

つづく