【第51回】100%実在する男女逆転風俗 その13

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僕の名刺を受け取ったマコトは、ポケットから自分の名刺を取り出して僕に渡した。名刺にはポップなフォントで“菅原隼人(仮名)”と書かれており、ビジネスシーンでは見られないようなファンシーなデザインをしている。菅原隼人とはマコトの本名なのだろう。

 

名刺には名前の他に企業名や肩書きなどが書かれているものだが、“菅原隼人”という名前の横に書かれている肩書きは“イラストレーター”となっていた。

 

「“イラストレーター”ってありますけど、イラストレーターなんですか?」

実はイラストレーターになりたくて、名刺だけ作ったんですよ。ホシノさんは出版の方だからチャンスがあるかな、って思ったんです。菅原隼人は僕の本名です」

「確かにイラストレーターを使うシチュエーションはありますよ」

「やっぱりそうなんですね!後で僕のイラスト送るんで、良かったら見ていただけますか?」

「もちろん良いですよ」

「急なお願いで本当にすみません。よろしくお願いします」

 

マコトの名刺を仕舞うと、マコト、レイ、岸田さんに別れの挨拶をする僕。3人はピシッと背筋を伸ばすと、恐縮するほど深々と頭を下げてくれた。中でも最も小柄なマコトが特に深く頭を下げていたことが印象的だった。

 

パッションのオフィスを出ると外はすっかり真っ暗。そのまま編集部に戻っても良かったのだが、一息つきたかった僕はパッションの最寄り駅前のハンバーガーショップへ入る。学校帰りの若者で賑わう店内でドリンクを買うと、奥にあるテーブルを目指した。

 

ゆっくりと腰掛けてストローからひと口。刺激的な炭酸が心地良い。そして、パッションで録音した音声を確認するとバッチリ録音されている。十分に素材が揃っていることから、誌面はスムーズに完成させられるだろう。

 

そして、今回はマコトの件がある。僕はマコトの名刺を取り出すと、もう一度じっくりと眺めた。そこには本名である“菅原隼人”という名前と“イラストレーター”という文字、その下には携帯電話番号と住所が記載されている。デザインはだいぶファンシーではあるが、名刺の情報量はいたってスタンダードだ。

 

出版社で働いているとこういったフリーランサーからの営業は多い。出版業界に関わるフリーランサーはフリーライター、漫画家、イラストレーターなどが存在するが安定して仕事を得ることは楽なことではない。そのため、暇を見つけては誰もが営業を行うもの。

 

これは僕のイメージだが、イラストレーターが最も厳しいだろう。イラストレーターの武器はイラストオンリーだが、それに対して漫画家は漫画もイラストも描くことが出来る。そのため、武器の多い漫画家に仕事の依頼が行くものなのだ。もちろん、イラストレーターにもチャンスはある。仕事のクオリティーとスピード、そしてギャラの安さだ。そして、僕の扱う風俗雑誌で仕事を得るのであれば、ソープとヘルスの違いなどの知識が欠かせない。果たしてマコトはどうなのだろうか。

 

続く