【第44回】100%実在する男女逆転風俗 その6

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しばらくするとカチャリと音がして鍵が開いた。

それを確認した僕はドアを開けて中へ入ると、もうひとつのドアがある。

ドアの前には傘立てが置いてあるだけで、パッと見ただけで女性専用デリヘルのオフィスと気づく人はいないだろう。

ゆっくりとドアを開けるとスチールのデスクが5~6台並んでおり、

数名のスタッフが忙しそうにパソコンに向かっている。

そして、デスクから見える位置には大きなホワイトボードがあり、出張ホストのスケジュールらしきものが書かれている。

これはまるで中小企業のオフィスのようだ。僕が見てきたデリヘルの散らかったそれとは大きく異なる。

そして、最も異なるのはスタッフの姿だろう。

誰もがタイトなスーツをビシっと着こなしているのだ。

スタッフの平均年齢は30歳前後であることから現役のホストではないが、明らかにその着こなしは経験者にしか出せないものだろう。

ヨレヨレのTシャツとジーンズ姿の僕は随分場違いだ。

呆気にとられている僕に向かってひとりの男性がやって来た。

ワイルドな口ひげをたくわえ、水泳選手のようにガッチリとした体格の男性だ。

「はじめまして、岸田です」

背筋をピンと伸ばしてゆっくりと頭を下げる岸田さん。

まるでホテルマンやキャビンアテンダントのような対応だ。

電話口ではもっと砕けたイメージだったが、それとのギャップに戸惑いつつも慌てて挨拶をする僕。

「はじめまして、ホシノです」

「こちらへどうぞ」

岸田さんはオフィスの奥にあるソファーに僕を案内した。

「コーヒーとお茶、どちらがよろしいですか?」

「え?あ、、、コーヒーをお願いします」

取材においてこれほど丁寧な対応は初めてだ。

これまでにデリヘルやピンサロなどさまざまな風俗店を取材しているが、

約束の時間に担当者や風俗嬢が遅刻など当たり前で、取材そのものをすっぽかされたこともある。

そういった経験から、僕は丁寧な挨拶とコーヒーだけでパッションに魅了されてしまった。

いただいたコーヒーをひと口飲むと、軽く世間話を始める僕。

「スタンダードな風俗の取材は何度もしてるんですけど、こういった出張ホストの取材は初めてでして」

「でしょうね。お店同士の横の繋がりはほとんどありませんので、具体的な数字は分かりませんけど実際に稼働しているのは相当少ないと思いますよ」

ワイルドは風貌からは想像出来ない穏やかな口調の岸田さん。

「ここまで丁寧に対応していただいたのも初めてです」

「普通のデリヘルとかソープって風俗雑誌や風俗サイトに露出する機会があるじゃないですか。でも、ウチらのような出張ホストって露出する媒体が無いんですよ」

「確かにそうですね」

「だから、取材自体も初めてなんで気合入れた部分もあるんですよ。変でしたかね?」

下を向いた恥ずかしそうにする岸田さん。

「いえいえ、そんなことないですよ!それと、ナンバーワンとナンバーツーのホストさんも取材出来るっていうことでしたが」

「そうですね。隣の部屋にいるんで呼んできますよ」

続く